かんちゃん自習屋日記 Self-Learning & Share

政治経済、歴史文化などを自習してその情報を共有しようと思います。I’m going to do self-learning about World/East Asian Politics, Economy, Culture and History. I will share the info as study result.

#5 “CO2を分離回収しながら、石炭火力発電を続けるのもいいんでないか?太陽光、風力発電の限界も考えてみた。”

A: 前回までのおさらい

 

今回も資源エネルギー庁の資料などをもとに自習してメモを作っていこうと思います。

 

前回のリンク:

https://jisyuuya.hatenablog.com/entry/2021/12/09/204220?_ga=2.96991773.385282721.1640082843-1631441527.1631840422

 

前回の自習で、最新の石炭火力発電IGCCを導入することで、CO2排出削減が期待できるということ、その実証実験が終わった段階だということを見てきました。さらに燃料電池を組み合わせて発電効率を上げ、CO2の排出量も約590g-kWhまで下げるIGFCの実証実験が2021年末~2022年にかけて行われるようです。

 

しかし、前回述べたように、それでも液化天然ガスを使った火力発電よりも、石炭火力発電はCO2排出量が多く、この点にツッコミが入れられそうですよね。

 

この点も踏まえて、更に自習して、興味深かった情報をメモ化していこうと思います。

 

()の番号はメモの通し番号で、[ ] 内は個人的な感想、コメント、ツッコミです。

 

 

B: CO2分離・回収、再利用について自習

 

(20) CO2分離回収の実証実験

 

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出典:大崎クールジェン株式会社, 第2段階 CO2分離・回収型酸素吹IGCC実証(CO2分離回収・液化プロセス実証含む) 

https://www.osaki-coolgen.jp/project/step2.html

 

 

大崎クールジェンプロジェクトのホームページを見ると、前回勉強したIGCCは実証実験の一段階目だったようですね。二段階として、IGCCの石炭火力発電設備にCO2分離回収設備を併設して、IGCCの設備から出る一酸化炭素と水素を二酸化炭素と水素にし、CO2のみを分離回収しようとしているようですね。

 

(21) 目標:CO2の90%回収

 

大崎クールジェン株式会社, 第2段階 CO2分離・回収型酸素吹IGCC実証(CO2分離回収・液化プロセス実証含む) 

https://www.osaki-coolgen.jp/project/step2.html から以下引用。

 

“新設商用機(1,500℃級IGCC)において、CO2を90%回収しつつ、発電効率40%(送電端、HHV)程度の見通しを得る。”

 

 

[この情報を見る限りでは、将来的にIGCCの石炭火力発電設備から出るCO2の90%以上を物理吸収方式で回収していく技術の確立を目指しているということですよね。

 

この技術が確立、普及していけば、将来、日本において石炭火力発電を他の発電方法と合わせて、一定割合で使用し続けることも可能かなと思いました。その意義に関してはラストで述べようかなと思います。]

 

 

(22)実証実験の成果報告

 

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出典:谷村寧昭 2021, CO2分離・回収技術の概要, 国立研究開発法人・新エネルギー・産業技術総合開発機構、環境部の資料:環境部次世代火力・CCUSグループ,

https://www.nedo.go.jp/content/100932834.pdf から以下引用。

 

“試運転にてCO2回収率目標の90%を達成、CO2回収純度目標の99%以上を確認した。”

 

[この情報によると、メモ(21)における実証実験は2016年4月から2021年2月までで、一旦、区切りが付いているみたいですね。ということで、実証実験は順調に進んでいるようですね。]

 

 

(23)コストの問題

 

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出典:谷村寧昭 2021, CO2分離・回収技術の概要, 国立研究開発法人・新エネルギー・産業技術総合開発機構、環境部の資料:環境部次世代火力・CCUSグループ,

https://www.nedo.go.jp/content/100932834.pdf 

 

すでに確立されているCO2分離回収の技術としての化学吸収法は4200円/t-CO2、前述したIGCCでの実証実験での物理吸収法の場合、2000円台/t-CO2という情報が見られます。

 

[これらの情報をみると、当然、コストの引き下げが課題になっているようですね。

 

費用に関しては、1,分離回収設備の建設費用、2,分離回収にかかるランニングコスト、3,分離回収した後、CO2をパイプラインで移送するのか、船舶で移送するのかなどの移送コスト、4,CO2の貯蔵場所を建設する費用、5,貯蔵に係る費用などが列挙できるのではないでしょうか。

 

おそらく、これらの費用を推計、合算すれば、現時点では、太陽光や風力発電に比べて、設備建設費用、ランニングコストなどは上回る金額が出るものと思われます。実際にどれぐらいの費用がかかり、最終的に消費者がどれぐらいに負担するのかという情報も、引き続き自習していきたいですね。

 

過去において、太陽光や風力発電に関わるコストは、当初、非常に高価なものでしたが、技術革新、商用化が進む中で、費用は低減していったわけですよね。なので、CO2の分離回収から貯蔵に至る費用も、将来、低減していくことが期待できるのではないでしょうか。]  

 

(24)CO2回収、貯留への期待度

 

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出典:資源エネルギー庁, CO2を回収して埋める「CCS」、実証試験を経て、いよいよ実現も間近に(前編),

https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/ccs_tomakomai.html

 

CO2を回収、貯留する=CCSと、さらに回収したCO2を資源として再利用する=CCUSはどういう位置づけの技術なんでしょうか。

 

資源エネルギー庁, CO2を回収して埋める「CCS」、実証試験を経て、いよいよ実現も間近に(前編),から以下引用。

 

国際エネルギー機関(IEA)のレポートによれば、CCUSは2070年までの累積CO2削減量の15%を担い、カーボンニュートラル達成時に約69億トン/年の削減貢献をすることが期待されています。”

 

[グラフを見ると将来的には再生可能エネルギーとほぼ似たような感じで、CO2排出削減の貢献量を占めていますね。グラフでは2050年あたりから、再生可能エネルギーの貢献量はあまり増えないようですね。

 

というわけで、将来的に、このCCUSの技術発展、普及が期待されているのだなという印象を持ちました。]

 

(25)二酸化炭素貯留の実証実験

 

資源エネルギー庁, CO2を回収して埋める「CCS」、実証試験を経て、いよいよ実現も間近に(後編)、このページ読んでみました。

https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/ccs_tomakomai_2.html

 

[CO2を貯留する設備と技術の実証実験はすでに苫小牧で行われ、30万トンの圧入に成功しているみたいですね。あと、もう一つ重要な情報は2030年までに商用化目指しているんですね。]

 

C: “太陽光、風力発電の限界”について考えてみた

 

さて、ここまで、石炭火力発電の新技術や二酸化炭素の回収分離について自習してきました。ここからは、私の勝手な見解、予測=“クリーンエネルギーの3つの限界”について書きます。

 

1,鉱物資源の価格高騰からくる限界

 

以前の自習リンク;https://jisyuuya.hatenablog.com/entry/2021/12/05/172606

 

以前もメモ化したように、IEAは世界の天然資源の需要は2040年までに4倍に跳ね上がると予測しています。風力、太陽光発電の設備を生産するのに必要な鉱物資源の価格もこれによって高騰することが懸念されます。また、蓄電池などの生産に使われる、リチウムの需要も2040年までに42倍まで上昇するとIEAは予測していますね。

 

この場合、削減目標をクリアーするために、お金のある国はクリーンエネルギーの設備の導入、更新ができるが、お金のない国は設備の導入・更新が十分にできない状況の発生が考えられ、太陽光、風力発電設備の世界的な普及の速度はやがて鈍化し、一定の限界に達するのではないでしょうか。

 

(他にも、鉱物資源を供給できる国の数は限定されており、それらの供給国の中には政情が不安定な国もあるわけです。さらに、そのような国で、全体主義国家が採掘の権利を取得するなどの状況から、将来、外交問題の衝突により、安定的な資源供給ができなくなることも予測されます。)

 

2,経済、雇用、社会、政治構造からくる限界

 

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出典:山本隆三常葉大学名誉教授), 2020年, 実は減らない世界の石炭火力発電、欧米の石炭火力を減らしたのは市場の力, WEDGE Infinity,

https://wedge.ismedia.jp/articles/-/20510 から以下引用

 

“これからも世界の石炭生産量は伸びると米エネルギー省は予想している。途上国を中心に石炭火力発電所からの発電量が伸びるためだ。世界の石炭火力発電量予測は図‐2の通りであり、2050年まで石炭消費量も年率0.4%の成長が予測されている。

 

なるほど、今後も石炭火力発電量は縮小するどころか、緩やかに成長していくわけですね。中国や、インドに関しても、依然、石炭火力による発電の役割は大きく、その存在を維持していくと予測されているわけですね。

 

過去から現在までの状況に目を向けると、何十年にもわたり、石炭をメインのエネルギーにしてきた国、社会、地域が存在するでしょう。具体的には、石炭で発電し、石炭関連産業で労働者が働き、労働者団体も形成される。石炭産業により地元経済が維持され、関連する経済団体ができたり、地域の有力者が形成されている国や地域もあるでしょう。さらにそれらの労働者や経済団体に支援されている政治家や政党の存在も考えられるわけです。

 

このような構造が存在する場合、“温暖化対策のためにクリーンエネルギーを導入しろ”と迫ても、迅速な変革を実現することは難しいかもしれないですね。

 

“クリーンエネルギーを導入しろ、石炭を燃やすな”という主張と、“今までの仕事、生活、構造を維持したいので石炭をもやしたい”という主張の二項対立に陥った場合、双方の主張は平行線のままで、二酸化炭素削減の目標達成は暗礁にのりあげるのではないでしょうか。(というか、既にずっと対立を続けているので、COPのたびに不満が表明され、デモが起きるんでしょうね。)

 

では、二項に対して、もう一項、軸を加えたらどうでしょうか。

 

①石炭を燃やすな ②石炭を燃やしたい ③New!石炭を燃やしつつCO2も削減

 

もう察して頂けましたでしょうか。③番目の軸を打ち出すことで、なるべく、従来の仕事、生活、地域、社会、政治構造への変化を最小限化することで、二項対立を抑えるというわけです。

 

そこで必要になってくるのが、二酸化炭素をより排出しない高効率の石炭火力発電の技術。もう一つは、二酸化炭素の回収、分離、貯留、資源としての再利用の技術なわけです。

 

欧州をはじめとする、CO2排出削減に積極的な国、環境団体がいかに自説を主張しても、これから経済発展を目指す国々はこれまで依拠してきた経済構造を崩してまで社会変革を行おうとはしないわけですよね。ならば、第三の軸“石炭を燃やしてもいいよね。同時に二酸化炭素も削減もする方向で”を推進したほうが良いのではないでしょうか。

 

この分野を推進していけば、日本はインフラを世界に輸出するビジネス面での果実とCO2削減への貢献という外交面での果実が期待できます。ゆえに、この分野に関して、CCUSの2030年の商用化目標を前倒しで達成し、CCUSのCO2排出削減貢献量を早期に増加させるべく、国のあらゆるリソースを投じていくのが良いのではないでしょうか。

 

というわけで、個人的には、風力や太陽光などの再生可能エネルギーを導入しながらも、それが唯一の選択肢だと過度に傾斜せず、高効率石炭火力発電とCCUSの分野にもバランス良くリソースを投じて行くのが最適なのではないかと思いました。

 

3,地理的な限界

 

ラストの限界は、地形的、地理的な限界ですね。よく言われているように、日本の国土は山地が75%を占めるわけですよね。いかに、太陽光や風力発電を普及させるにしても、いずれ発電に適した用地の限界にぶつかるのではないでしょうか。発電に適した場所であっても、自然保護や治水の観点から土地の造成の反対運動に直面したり、風力発電低周波の騒音を危惧した住民たちの反対運動に直面したりして、設備を敷設できる場所が限界に達するのではないでしょうか。

 

D: Reference

 

大崎クールジェン株式会社, 第2段階 CO2分離・回収型酸素吹IGCC実証(CO2分離回収・液化プロセス実証含む) 

https://www.osaki-coolgen.jp/project/step2.html 

 

谷村寧昭 2021, CO2分離・回収技術の概要, 国立研究開発法人・新エネルギー・産業技術総合開発機構、環境部の資料:環境部次世代火力・CCUSグループ,

https://www.nedo.go.jp/content/100932834.pdf 

 

資源エネルギー庁, CO2を回収して埋める「CCS」、実証試験を経て、いよいよ実現も間近に(前編),

https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/ccs_tomakomai.html

 

資源エネルギー庁, CO2を回収して埋める「CCS」、実証試験を経て、いよいよ実現も間近に(後編),

https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/ccs_tomakomai_2.html

 

山本隆三常葉大学名誉教授), 2020年, 実は減らない世界の石炭火力発電、欧米の石炭火力を減らしたのは市場の力, WEDGE Infinity,

https://wedge.ismedia.jp/articles/-/20510 

 

 

E: SNSで定期Update

 

週2-3回ぐらいのペースで自習の過程、情報を上げる予定です。情報をその都度受け取りたい方はSNSのフォローよろしくおねがいします。

 

https://twitter.com/jisyuuya

 

 

F: 自習屋の目的とは?

 

国内外の政治経済、歴史、文化などをテーマに、情報を集めて自習しています。自習の過程で触れた、興味深かった情報、データを、要約、小分けして、メモ化=素材化していくのがこの自習屋の目的です。

 

例えるなら、(1)魚を釣る(海外英語メデイア、国内外の論文、一次資料などを見つけて、自習する)。(2)魚を捌いて、切り身や刺し身化する(興味深い点の要約メモを作る)。私が、その素材を料理する際=議論の組み立て、別の学習をする際に、その情報を利用しやすい素材メモにしておくのが目的です。

 

時々、[ ]内に、その情報に対する、どういうふうに料理すれば使えそうか、味付けの方向性=コメントやツッコミも入れていこうかと思います。

 

G: あくまでも参考に

 

このブログは、私の自習のメモ、興味深かったデータ、学習の過程と記録です。ゆえに、正確ではない情報や、誤訳などが含まれている可能性があるので、参考程度にお読みいただければと思います。正確な情報を必要とされている方は、引用元などを添付しておきますので、そちらも参考にしていただければと思います。